64-ロクヨン-について
作家・横山秀夫氏の『D県警シリーズ』の作品のひとつ。
1998年に出版され松本清張賞を受賞した『陰の季節』が1作目で、その後『動機』『顔 FACE』と続き、『64』は4冊目で、シリーズ初の長編。
2015年にドラマ化。NHKの「土曜ドラマ」枠で4月から全5回放送された。
タイトルの「ロクヨン」とは、わずか7日間で終わってしまった昭和64年に起きた未解決少女誘拐殺人事件の通称名。事件発生から13年後の平成14年、時効間近のロクヨン事件を視察するために警察庁長官がD県警を訪れることになる。そんなときロクヨンを模した誘拐事件が発生、それによって県警は大きく揺さぶられる……という内容だ。
旧柳原分庁舎について
今回、映画『64-ロクヨン-』のロケ地として使われた旧柳原分庁舎は、長岡市庁舎として1955年に竣工された。
手掛けたのは日本の近代建築運動の先駆けとなった分離派建築会のメンバーである、石本建築事務所の石本喜久治氏。
1977年、幸町に新庁舎が作られるまで使われていた。その後は分庁舎、中央公民館、科学博物館として活用。
現在は閉鎖中で取り壊しが決まっている。
なお6月に見学会を開催予定なので、興味のある方はぜひご参加を!
撮影時の使用状況
ロケハンが行われたのは2015年1月。
スタッフは、さいわいプラザ(旧長岡市役所幸町分室)と、旧長岡市役所柳原分庁舎を視察。最終的に「旧柳原分庁舎」が選ばれた。撮影は2015年2月から4月まで行われた。
物語の主軸となるのは昭和64年に起きた「ロクヨン」事件と、その模倣の誘拐事件なのだが、前半は警察署内が重要な舞台となっている。
主人公はD県警広報官の三上義信。彼はロクヨンでは追尾班として身代金受け渡し現場に向かう父親の後を追っていた。かつては刑事部で活躍していたが今は広報室勤務となり、室長を務めている。当初は記者クラブのメンバーともうまくいっていたのだが、交通事故の加害者を匿名発表にしたことで関係が悪化。広報室と記者クラブの対立が激化していくのだ。
警察署としてロケが行われた柳原分庁舎には三上役の佐藤浩市をはじめ、綾野剛、榮倉奈々、椎名桔平、滝藤賢一、奥田瑛二、仲村トオル、瑛太、三浦友和等々、警察、記者クラブのキャストの多くが顔を揃えることとなった。
柳原分庁舎、ビフォア&アフター
閉鎖中の建物という利点を最大限に活かし、ほかの利用者との兼ね合いや人の出入りなどを気にせず、建物まるまる一棟を撮影に使うことができた。 そのためメディア向けの映画資料に「ここまで建物全体を映画用に改装した、臨場感のあるロケセットはあまり例がない。それによって俳優たちも、移動などの時間を気にせずにじっくりと腰を据えて、芝居に集中できる環境が整えられた」と書かれるほどの作り込みが行われた。
まずは2階部分からご紹介。 ここはかつては旧科学博物館だった場所だ。ここに前編のクライマックスでもあり、メイン舞台でもある警察署内の広報室と記者クラブが作られた。
上が警務部、下が本部長室の作り込み前・後の様子。
中央公民館部分を使った本部長室は壁やドアを新たに設置したり、赤いカーペットが敷かれたりと、かつての面影は全くないほどの変わりよう。
部屋のドアの入口には在室・不在が分かる赤いランプがつけられるなど、見事に生まれ変わった。
セットはほとんど画面に映らないような細かい部分も手を抜かず作り込まれている。
たとえば記者クラブのデスクは、記者それぞれの性格を反映されているそう。そのため「雑然と散らかったもの」「整理整頓が行き届いているもの」などさまざま。
東洋新聞キャップ・秋川(瑛太)のデスクはどんな様子なのか?など、さりげないところをチェックしながら映画を観ると、よりドラマが深くなるかもしれない。
映画『64-ロクヨン-』ロケ 足利編
タイトルの『64-ロクヨン-』を象徴するあの場面、撮影は栃木県足利市で行われていました!
足利市で行われた映画『64-ロクヨン-』ロケは全部で5カ所。
なかでもいちばん印象的なシーンは、昭和天皇が崩御され昭和64年が終わりを告げたことを伝える場面だ。町全体が重く悲しい雰囲気に包まれたなか、まっすぐに続く通りに半旗が延々と掲げられているという、まさにタイトルをそのまま表現していた。
ロケ支援を行った足利市政策推進部・映像のまち推進課の関口智樹さん曰く「こういう場面を撮りますというのは、もちろん事前に聞いていました。でもまさかあんな印象的なシーンだとは思わなかったので正直、ビックリしましたね」とのこと。
撮影が行われたのは交通量の少ない早朝6時。順調に進み所要時間は3時間弱。9時前にはロケが無事に終了したそう。