2016
25
Feb

『長岡古里映画学校』レポート

イベント    2016.02.25   コメント (0)

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2月20日、21日の2日間、『長岡古里映画学校』が開催されました。
このイベントで「校長」を務めるのは古里映画の巨匠・大林信彦監督です。

映画『掘るまいか』の上映に続き、ミアモーレプロジェクトの任命アーティストによる「故郷はひとつ」の歌声が会場を彩り、華やかなオープニングとなりました。

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まず最初に森民夫市長が登壇。映画学校が掲げる『映画は古里を見つめ直す最高の教材』を「素晴らしい言葉」と紹介。近年、地方創生と叫ばれていますが大切なことは、そこで暮らす人たちがいかに自分たちの古里に誇りと自信を持つかということだと語りました。

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そしていよいよ、大林校長の開校の挨拶です。
大林校長は2009年8月に森市長に初めて会ったときのエピソードを披露。
「慰霊の花火『白菊』を見ながら、長岡空襲の話、長岡花火の原点は何かという話を聞きました。そこで私は森市長から平和の架け橋としてパールハーバーで長岡花火を揚げたいという思いを打ち明けられたのです」
監督は1960年代にハワイに行ったとき『日本人は出て行け!』と罵られてホテルを追い出されたという体験を思い出し、花火打ち上げを叶えることは相当ハードルの高いものではないかと、市長に伝えたそうです。
しかし森市長から返ってきた言葉は、覚悟はできています、というもの。
「それなら私も覚悟を決めて、長岡花火の映画を作ろうと決めました」
その思いは実を結び、『この空の花‐長岡花火物語』が作られました。
監督は映画完成の後、この映画と共にハワイに行きました。上映終了後、ハワイの女性が監督のところにやってきたそうです。その方の厳しい眼差しに監督は一瞬身構えました。しかしそのご婦人は「これから未来を生きるアメリカと日本の子どもたちの為にあなたは良いプレゼントをしてくださった。だから私はあなたに『ありがとう』と言います。この『ありがとう』は私の勇気です」と語りかけてきたそうです。
「平和は勇気であり、未来を共に作ること。長岡の皆さんと一緒にこしらえた映画がそのお役に立った。この映画が伝えたことは長岡市民の哲学でもあります。ここ長岡の里で、この映画学校を開いていただいたことを誇りに思います」と語られました。

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さらに特別ゲストとして、『この空の花‐長岡花火物語』で長岡市長役を演じた俳優の村田雄浩さんが登場しました。村田さんは長岡市がメインロケ地の映画『手のひらの幸せ』にも出演されるなど当市とは縁のある方です。
その村田さんにとって古里映画とはどんなものか訪ねてみたところ「古里というのは、文化や人の心ですよね。自身が経験したことを次世代につなげていくのは大切なこと。古里映画はそのメッセージを伝える大切な役割を果たしていると思います。自分が出演した映画ではありますが『この空の花‐長岡花火物語』はすごい映画だなあと一観客として思いました」という嬉しいお言葉をいただきました。

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北海道芦別市、広島県尾道市、大分県臼杵市など「古里映画」でつながった日本各地からの参加もあり、会場は大いに盛り上がりました。
映画『なごり雪』の舞台になった臼杵市の市産業観光課の廣瀬愼介さんは「映画を通して見ると、自分たちの町が良いところだなと改めて思えます」と、臼杵市の観光PRキャラクター「ほっとさん」の名刺片手に笑顔で答えてくれました。

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芦別からも多くの方が長岡にいらしてくださいました。
芦別はそもそも大林監督を校長に迎えた映画学校が誕生した地であり、映画『野のなななのか』のロケ地。
『野のなななのか』で製作委員会の委員長を務めた宗方裕之さんは「自分たちの町が映画のメインロケ地になるなんて、一生に一度あるかないか。だから委員会の仲間たちとの合い言葉は『一生に一度の苦労をみんなでしようぜ』でした。我々も同じ大林組の仲間として35日間、現場に通いました。振り返ってみると楽しかったことばかり思い出します」と、当時を懐かしそうに語ってくださいました。

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『野のなななのか』製作委員会副委員長を務めた梅田正孝さんは、『星の降る里芦別映画学校』の実行委員長で永昌寺というお寺のご住職。ちなみに映画の中の法要のシーンに登場するのは梅田さんのお寺とのこと。
「映画学校のそもそもの始まりは、大林宣彦監督の作品が大好きだった鈴木評詞(ひょうじ)というひとりの少年から始まります。鈴木少年は後に市の観光課で働くことになります。彼が『ぜひ大林宣彦監督の作品を上映して、監督の話を聞きたい』と始めたイベントが『星の降る里芦別映画学校』です。彼は4回目までは元気にやっていたのですが、5年目に病気で急逝してしまいました」
自分たちは一般市民ということで、それまでは「お手伝い」としての参加。舵取りの鈴木さんを失い、どうしようかと悩んだそうです。しかし「弔い合戦ではありませんが、その年は皆で団結して何とか開催にこぎ着けました。その年、市民ホールは満席になりました」
その後「とりあえず5回はやったんだから10回まではやってみようと。そして節目の10年を迎え、もう10回は続けようと決めました」
鈴木さんは生前「芦別でぜひ古里映画を撮ってもらいたい」と大林監督と約束を交わしていたそうです。「ですから、鈴木くんが始めた映画学校の集大成が『野のなななのか』なのです」

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大林監督の古里、尾道からは「山陽日日新聞」の記者・幾野伝(つたえ)さんがやってきました。幾野さんは大林宣彦監督とは1995年の『あした』以来、20年以上にわたるお付き合いのある方です。監督の子ども時代の絵や手紙などの貴重な資料を持参してきており、それは2日目のフォーラムで監督自身の解説付きで紹介されました。

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長岡ロケなびの目的はロケ誘致だけではありません。
映像作品を通して、もしくは誘致活動を通して、長岡で暮らす人たちが、自分たちの身近な場所の魅力を再発見したり、足元にある大切な宝物を見つめ直すきっかけや一助になれば、という思いもあって活動を展開しています。
今回の古里映画学校は、改めてその原点を思い返すよい機会となりました。


2月20日(土)
●ハイブ長岡2Fけやき
11:45〜
映画「掘るまいか」(’03)上映
 山古志地域小松倉集落と魚沼市を結ぶ、877mある手掘りトンネル「中山隧道」完成までの道のりを描いたドキュメンタリー映画(83分)

13:30〜オープニング
大林監督あいさつ、古里映画学校の内容紹介

13:45〜
「長岡造形大学生の作品紹介」と「大林監督による講評」

14:45〜
講義
大林監督の映画「HOUSE」(’77)を上映し、映画の役割や映画に込めたメッセージを話します。

【ハイブ長岡2Fロビー】
11:00〜17:00
古里交流広場(古里映画撮影地のPRコーナー)


2月21日(日)
●リリックホール コンサートホール
10:00〜
AKB48ミュージックビデオ「So long!」(’13)上映
大林監督が市内各地で撮影。山古志で暮らす高校生と福島県南相馬市から来た高校生の友情物語。長岡花火や米百俵の精神など、長岡の誇りが全面に盛り込まれた作品(64分)

11:10〜
「古里映画フォーラム〜古里リジュベネーション〜」
映画によるまちの若返りや全国の事例などを語ります。

12:30〜
映画「野のなななのか」(’14)上映
「この空の花」の姉妹映画。主演は越後長岡応援団で女優の常盤貴子さん。大林監督と常盤さんが長岡で出会ったことから生まれた作品(171分)

【ハイブ長岡2Fけやき】
10:00〜16:00
古里交流広場(古里映画撮影地のPRコーナー・古里映画ロードショー)

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